無理と思えばボールも届かない

 車椅子バスケットボールのコーチになってすぐの頃、これはいいシューターになれるだろうと思えた某1点選手。両手打ちというバランスが取りにくいフォームでも安定して打つ力、距離も出そうだった。
 コーチになる前からチームのゲームを見に行ってたが、彼の印象はシュートが入る入らないよりゲーム中の態度と終った後の言動が気になった。
 なによりもシュートが入らない時首をかしげたり不満そうな表情が気になった。シュートが入らない時クビをかしげる・・・・・たいていは回りに対する「俺はホントはもっと入るんだよ、落ちたのは調子が悪いだけ」というアピールだろう。負けたあとのセリフ『調子が悪くて全然シュートが入らなかったんですよ』も同様。
 無意識のうちにも実力不足だから入らないということを認めなくない妙なプライド。とにかく自分は凄いと認めて欲しい気持ち。
 練習ではやはりペイントゾーンのすぐ外側、かなり近いところで打っている。試合中そんな距離、一番ディフェンスがいそうなところから何回シュートを打てるというのやら。とりあえず車椅子1台分下がって打ってみろと言っても返ってきた答えが「届かないですよ」。あの時は打ってみようともしなかったっけ。
 自分が入れることができる距離でシュート練習しても果たして本当に意味があるのかどうか。その位置が試合中シュート機会が一番多いならいいけど、そうじゃないならゲームでは使えないのは当たり前。うちの選手はほとんどそうだった。チームとして誰がどこでシュート打つべきか。そういうプランが無いから各自長年やって自分が一番入るところからばかり練習してた。

 案の定試合になると相手がいる分練習で打ってる距離より少しは遠くなる、練習しているポジションで打てない、そうそう入らない。でも某1点選手には勝負を度外視してでも打たせた。相手のレベルが高いと遠いポジションからじゃないとダメ、スペースを作れないと打てないよ、何度も言った。1点選手にこんだけオフェンスをさせるチームが回りに見当たらなかったけど、とりあえず気にせず打たせた。やがて入るようになり、その距離感覚もつかめてきた。
 やらせてみてわかったのはディフェンスとの距離の見切りがいいこと。すぐそばにディフェンスがいてもぎりぎりシュートブロックされないと見切ったら、プレシッシャーを感じず打てる。ブロックされないなら、ディフェンスが100m先にいようが目の前にいようがフリーはフリー。そういう感覚を持っている。
 1シーズン経過した時は、「届かないですよ」と言ってた距離からいつのまにか打ってた。これは予想以上だし、本人の意思の強さ、能力の高さ、理解力、努力だろう。相手チームにまだはっきりとマークはされてなかったシーズンだけど十分レベルアップしたと思う。

 今年は笑っちゃうくらいはっきりとマークされてる。シーズン最初の大会では去年とかわらないディフェンスされてたけど、そこで50%くらいの確率で決めた。あれでさすがにやばいと思われたかな。BEST5受賞も相手がシュータとしての存在を認めてくれたということだろう。おかげで前から二人で話した通りディフェンスの内側にスペースができた。今経験を積んでいる最中だけどインサイドも使えるようになってきた。
 チームとして一歩前進。


 今シーズンがはじまる前、練習で初めて3Pから打たせようとしたら「やったことないし、どうせ届かないですよ」という態度。はっきり口にはしなかっただけ前の年より成長したかな。で、無理矢理やらせてみたら届くし、運よく何本か入った。実にうれしそうだった。ホントに届くわけがないと思ってたんだろう。シーズンに入ってから3Pを打てと言っても怖がってなかなか打てなかったけど、秋の大会のあるゲームではついに終了間際3Pを打ってしかも決めた。あれで精神的にまたレベルアップしたんじゃないかな。

 何事もやってみなきゃわからない。自分の考えが正しいかどうかわからない。結果はどうなるかわからないものだけど、やる前からできないと思ってたらスタート地点にも立てない。やってみなきゃわからないものはたくさんある。自分にブレーキをかけちゃいけない。
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2003年09月01日 | Comments(0) | Trackback(0) | ◆スポーツ
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